周産期のリスクを軽減することは畜主にしかできない。

酪農をしていくうえで、避けて通れないのがお産です。
そして、そのお産とその前後を合わせて「周産期」と言って、
乳牛の事故や疾病のほとんどがこの周産期に発生します。
難産をはじめ、後産停滞といったその後の繁殖に影響を及ぼすものや
ヨンペンや低Ca血漿など、乳牛にネガティブな要因を与えるものばかりです。

これらの問題に対して、日本でも、世界でも多くの研究がされています。
なぜ発生するのか、牛の生理と飼養管理の双方から、現場レベルで
日々の管理の何が影響しているかを、さまざまなアプローチで検証されています。

少なくとも、私が畜産を学び始めた15年前には既に、周産期の疾病などについて
多くの研究がされていました。
しかし、15年経った今でも、同様の研究は行われており、
問題解決の手法として新しい技術が出てきています。

それでも、未だに同様の疾病は繰り返されています。

この結果を、「乳牛の生産能力が高くなりすぎている」として
牛群内で数割程度の発症は仕方ない。とか、

リスクはあるから、産前産後、発症前に事前に投薬することで回避、
もしくは、症状の軽減を図ろうとする技術。とか、

根本的な解決までたどり着けない思考回路が蔓延しているように感じます。

私は、15年という短い期間しか、乳牛に触れていませんが、
牛に発生する問題は、そもそも牛が健康じゃないから発生するとしか思えません。
そして、その健康じゃない牛を作ってしまうのは、畜主だと思っています。

私は、薬に頼る牛の飼い方はしたくないと考えています。
と、同時に、全ての疾病や事故をゼロにすることを目指しています。

この2年間、子牛の肺炎治療は1件で済んでいますし、
下痢による衰弱や死亡もありません。

分娩においてもヨンペンは0件で、低Ca血漿の発生は、
半年以上在籍している牛に関しては発症していません。

現代の牛は発情が弱いといわれますが、
全ての牛がスタンディングによる発情を見せてくれます。

研究は多く行われています。
しかし、必要なのは、多くの研究結果を見る事ではないし、
新しい技術を実践する事でもない。

本当に必要なのは、
「目の前の牛を見る事」に尽きると思います。
私の目の前の牛は、何が足りないか。
私の飼う牛群は、どういう問題をはらんでいるか。
それに気づくために、さまざまな事例を知り、手段を学び、牛に還元する。

繰り返しますが、新しい技術や、新たに分かった研究結果を
私の牛群に試してはいけない。
私の牛群に当てはめてはいけない。


人に飼われている以上、
飼われている動物に起こる問題は、畜主のせいです。
その事実から目を背けなければ、
牛の目を見る事が出来るし、学ばずとも、気づける。

家畜である牛に幸せを与えれるのは人だけです。

コメント